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2017年1月

耳が遠くなると…

 「耳悪じいさん、電話が鳴っているわよ。あたしは手が濡れているから出て」

 気が付かなかった私に、カミさんが両手でメガフォンを作ってお勝手から声をかけてきた。よくあるシーンである。もっとも、かかってくるのはカミさんの方が多いので、日ごろはカミさんがすぐ出るのだが…。

 

 そんな私だが、最近たて続けに不思議が起きている。それは、テレビを見ているとき、或いは新聞を読んでいるときの途中で、ふと何の気なしに立ち上がり、用もないのに障子をあけて、縁側の手前の廊下に出るのである。

 

 すると縁側には、アウトドア派の猫のイークンがいる。イークンは右手(右前足)でガラス戸を少し開け、そこに顔を横にして鼻先を差し込み、頭で広げて入ってくる術を心得ているのだが、その手段を講じる前に私が出向いてガラス戸を開けてやるのだ。

 

 「イークンが開けてくれと鳴いたわけではないでしょう。それなのによく気が付いたわね」とカミさん。

 「俺としてもただわけもなく廊下に出てみただけなんだよ。それが丁度イークンの帰ってきたときにぶつかったのさ」

 

 そんなことが2~3回続いたら、カミさんが言った。

 「耳が遠くなったらイークンの心の声が聞こえるようになったのかしらね…」

 まさか…でも、ひょっとして…。

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まるでお岩さん

 Img_5901 ベッドを出たとたん、猫のイークンが「お腹がすいたニャーン」と足元にすり寄ってきて、私の顔を見上げた。その目つきは「いつまで寝ているんだ」とにらみつけているようだった。

 「ハイ、ハイ、ただいま」

 イークン係の私は大急ぎで食事の用意に向かった。イークンの食事処はテレビの置いてある居間の隅のボール箱だ。いつもはいったん廊下に出て大回りして行くのだが、このときは座卓の横を通り抜けて直行した。

 

 それがいけなかった。座卓と襖の間に置いてあった座布団の隅に左足が乗り、するっと滑った。起きぬけで足元も定まっておらず、そのままバタッと左に倒れ込んだ。座布団の横は木製の裁縫箱の定位置、その角に左目の上を思いっきりぶつけたのだ。

 

相当強くぶつけたのでかなりの痛さだ。血でも出ているのではないかと、恐る恐る触ってみた。プクッと膨れ上がっていただけだった。鏡で見てみてみると、上瞼が腫れあがり目を塞いでいた。イークンはとみれば、平然と食事をしていた。

 

 「あら、痛そうね。まるでお岩さんみたい」

 カミさんは私の顔を見ても、若いころ病院に勤務していたこともあってか、それほど驚かない。それでも即病院に駆けつけた。医師の診断では「骨に異常はないので、そのうちに腫れも引けるだろう」ということだった。帰宅してから改めて鏡の顔を見た。目の周りが青く膨れ上がり、まさに怪談のお岩さんだ。その顔を眺めながらつくづくと思った。歳は取りたくないものだ……と。

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