ピンポコ天寿を全う

ピンポコ……9年前の鉄砲祭りの際、関東は千葉県のPhoto 船橋に住む娘一家が来た時、出店で買ってきた金魚に、孫がつけた名前である。孫は二人、上が女の子で小学一年、下は男子で年小さんだった。

その金魚が天国へ旅立った。買ってきたときは3匹だったのだが、他の2匹は間もなく死んでしまった。左右均等に広がっているべき尾ひれの片方が千切れていた、一番弱々しそうだった一匹が生き残った。

来た当初はそれこそ1センチ位だったのが、20センチ近くにも大きくなり、大きな目玉をギョロつかせ、私たち老夫婦を楽しませてくれた。卵を産んで驚かせてもくれた。大人のピアノ教室に通い始めた私が、電子ピアノではあるが練習を始めると、音を楽しむかのように、急に活発に動き始めたりもした。

晩年はバランスを取れないのか、横ムキに寝ていることが多くなったが、餌を食べる時とピアノを聴くときには、元気に泳ぎ回っていた。

 その日の朝は、11月の中旬だというのに、まるで真夏のように雷がなり、雨が激しく降っていた。だが、埋葬する時には日がさしてきた。ピンポコは雷鳴に乗って天国へと昇って行ったに違いない。

孫も上の子は来年大学受験、下の子は中学2年だ。餌やり、水替えなど、老夫婦の尻を叩き、孫との間に話題を提供してくれた9年間……寿命は810年といわれるから、天寿を全うしたといえるだろう。浄水用のブロックを墓石代わりにし、老夫婦は手を合わせた。9年間も付き合ってくれてありがとう。

 【写真は元気なころのピンポコ】

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コスモス満開

012_3 ハイビスカス、ブーゲンビリアなどは一年中咲いている種子島ではあるが、そのうえにその季節しか咲かない花があるのだから、花マニアにとっては嬉しいに違いない。カミさんもその一人である。

11月初旬の日曜日、コスモス観賞に出かけた。集落を抜けるちょっ 016 と手前、人家の間から白の混ざった赤紫色が目に飛び込んでくる。周囲は緑一色なだけに、その鮮やかさにまず目を奪われる。

そして到着、道の両側にコスモス畑が広がる。周囲を一周する家族連れ、子どもたちを花の中に立たせてカメラを向けるパパ、腰を落と027_2 してじっくり魅入る老夫婦……みんな「すごい、きれい」を連発している。

カミさんの友人に会った。

「あら、あなたたちも来たの? アタシは昨日も来たんだけど、また来ちゃった。去年より少し広くなっているわよ」

リピーターのでるほどの人気である。木の上に止まっていたコシラサギも舞い降りてきた。

「去年も見たシー……」あまり気乗りしていなかったカミさんだったが「来てよかった」と、Vサインしてカメラに収まった。

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我が家の台風一過

「あれ、私の電話番号帳がない」

台風が通り過ぎて一週間以上も過ぎたころ、カミさんが言い出した。友人に電話をかけようとして気がついたのだ。これまでの生活で知りえた電話番号の全てが控えてある、カミさんにとっては貴重な電話帳である。

カミさんは宅急便の届け物などが来たときなど、印鑑を取りにいく際、手にしていたものをひょいとその辺に置く。そして何処においたのかを忘れる。後で大騒ぎして探す。電話帳も似たような情況だろうから、すぐ出てくると安易に構えていた。ところが何処からも出てこない。

探し疲れて考えた。そういえば、台風がまだ通過中の夜中の12時ごろ、突然電気が消えた。外を見たら我が家だけ停電だ。九電、電気工事店などに電話をかけるとき、その電話帳を持ち出した。だが、カミさんの電話帳は役に立たず、テレパルで探し出した。そして、ガスの給湯器の漏電と判明した。今度は燃料店に電話、店員が駆けつけてくれ、あたふたと応対した。今回の台風はまともに上陸したわけではないが、いつもの台風とは風向きが違い、家の裏から横殴りの雨が吹きつけたため、給湯器に雨が入り込み漏電したのだった。翌日新しい機種に取り替えることで決着したのだった。

さて電話帳は……。テレパルに目をやると、カミさんがあわててしまいこんだとみえ、いつもの場所とは違うところに差し込んである。元の位置に戻そうと、テレパルを引っ張り出してみた。あった。郵便番号簿との間に挟まっていた。

「ああ、よかった。あなたは物を探し出す天才ね」

これまでにこの言葉を何回聞いたことか……。こうして我が家の台風一過は遅ればせながら訪れた。

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名月や…

 001 043_2 10月3日は中秋の名月、縁側にスーパーで買い求めてきたススキ、おみなえし、萩、栗など秋の草花と、子供をたくさんつけた里芋の親、果物、団子を供えた。飾り付けが終わったところへ、近所の一人住まいの元気なお婆さんが、キナコのおはぎを持ってきてくれた。

004 「アンタのお母さんも、こうした昔ながらの飾り付けが大好きだったね。きっと天国から見て喜んでいなさるよ」

亡き母のよき話し相手でもあったお婆さんは、おはぎを持ってきた甲斐があったと大喜び「感心、感心」と、優しい笑顔を見せて帰って行かれた。

「丁度飾りつけた時に持っておはぎを来てくれるなんて、不思議ね。きっと母さんが呼んだのかもしれないわね」

母が亡くなって3年と4ヶ月が過ぎた。母と共に生活をするために、種子島に来た私たちであったから、10年間は全て母中心に回った。そのため今もって、何をするにも母との思い出に繋がる。

10時半過ぎ、明月は丁度我が家の真上に輝いていた。

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流木の山

016 西之表港に流木が積まれているという話を耳にしたので見に行った。想像以上の量と巨大さに目を見張る。その日の朝刊に船で引き揚げている様子の写真が掲載されていたが、それ以上の大きさの流木がゴロゴロ、これでは快速船が悲鳴を上げるのも無理はないと実感した。

011 小さな貝がびっしり付着しており、太陽にさらされ腐敗していくのか、異臭が潮風に乗って流れる。記事によると10管、種子島、屋久島漁協などによる24日までの回収本数は約3500本というから、これはほんの一部だ。

018 引き揚げられて間がないと見える流木は、水分をたっぷり含み、見るからに重そうだ。全て角が丸く削り取られており、荒波にもまれながら、長い間漂流していたことを物語っている。

中にはテトラポットのような形をした木の根もあり、どのような情況の下で、どのようにして海に押し流されたのかを想像するとき、自然の力のものすごさを、改めて思い知らされた。

巨大な流木の山に異臭も加わって、不気味なムードでさえあった。

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三色ハイビスカス?

  018 相変わらず雨が降らない。たまに降りだしても、ほんの45分で止んでしまい、017_3 焼け石に水といった感じ。

そんな状態が続くある日、太陽が沈むころ庭に水を撒いていたら、最近リハビリの治療をしてくれている女性の先生が通りかかった。

021  「あら、ここに住んでいるのですか。いつも花が咲いているので、楽しみにしているんですよ」

向こう側の歩道からわざわざこちらに渡ってきて、声をかけてくれた

その翌日、見慣れているハイビスカスではあるが、白、赤、黄色の三色が、我が家の庭としては珍しく同時に咲いたので、写真に撮り、先生の声が耳に残っていることもあって、臆面もなく載せてみた次第。“ご笑見”のほどを。

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別れの港

002 「ボーッ」

汽笛が工事中の西之表港に響き渡る。

「サヨウナラーッ、またきてねーっ」

千切れた色とりどりの紙テープを風になびかせて、船が港を後にする。目にハンカチを当てる老婦人。船の後を追う子供たちの後を親が005 ついていく。船上と港で手をいつまでも振りあう……。

鹿児島に帰る従姉妹を見送りに行った。ときは正にシルバーウイーク、敬老の日の翌日のことである。西之表港は見送りの人で賑わった。最近では港に紙テープが乱れ飛ぶのは、盆と正月、それに異動に019 よる教師を見送る時くらいのもの。いまどき港が賑わうのは珍しい。それは、台風に見舞われた台湾からの流木で、快速船が運航できず、頼りはフェリーと空路だけとなったためだ。ようやく引き返すことも視野に入れるという条件付で、快速船の運航が再開されたが、それも全便ではないため、フェリ-は超満席、港が大賑わいとなったというわけ。

その昔、片道7時間かかった船便も、今では3時間半。それでも1時間半の快速船に乗客は集中する。見送る相手がどのあたりに乗っているかよく分からない快速線では、見送るほうも乗船したらすぐ帰ってしまう人がほとんどだ。それが流木のおかげ?で、古きよき時代の見送り風景がよみがえったわけだ。

港の端まで船を追いかけて行った若い男女が、手を繋ぎ、名残惜しそうに振りかえりながら戻ってきた。最近サーファー族の移住が増えているそうだが、この二人の場合も、両親が様子を見に訪ねてきたのだろうか。

紙テープを握り、手を振りながら出て行く船を追いかける……やはり、これが港の別れにはよく似合う。

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馬毛島と夕日

033_2 「ワーッ、きれいな夕日」

道路を挟んで向こう側の家に帰る従姉妹と、見送りに出ていたカミさんが同時に声を上げた。最近、きれいな夕日を見かけると、車を走らせて撮りにいくなど、夕日マニアもどきの行動をとっている私、これを見逃すわけにはいかない。

038_2 慌ててカメラを取り出し駆けつけた。確かにきれいだ。馬毛島の少し盛り上がった丘の真上にかかっている。だが、こちらの歩道からだと半分隠れている。車の途絶えた隙をついて、道の真ん中に飛び出し、カメラを向ける。夕方とあって交通量が多い。一回シャッターを押して、すぐ反対側の歩道に走る。

040_2 走るといっても、目下のところ左足に力が入らず、爬行状態の私、素早い動きを取れない。カミさんはやきもき。

「ホラ、ホラ、車が来るわよ。迷惑をかけるから、もうやめて」

掴まれた手を振りほどき、また飛び出しカメラを向ける。こちらに向かってくる車が目の前に迫る。シャッターは押せないまま反対側の歩道へ。

刻々と沈みゆく太陽……「やめて、やめて」というカミさんの声を振り切って、何とか三回シャッターを切ることができた。もう少し頑張りたかったのだが、車の往来がますます激しくなってきたので、仕方なく諦めた。

少しボケたが、ここからは“この日、この時”にしか見られない、馬毛島の真上に沈む夕日を撮ることができた。

 

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百円市場にメダカ

019_4 「この前アッポーランドの帰りに、百円市場でニガゴリを見たんだけど、今日も売っているかしらね」

ブログネタの考案がカミさんの言葉でさえぎられた。カミさんがこういうときは、車を出せということだ。九月も中旬を過ぎれば、もう時期は終わっているだろうとは思ったが車を出した。種子島には百円市場があちこちに点在している。旬のものが手に入るとあって、カミ014_3 さんはファンだ。

案の定もう売ってはいなかった。他を見てみようということになり、いつものコースを数ヵ所回ったが、結局なかった。カミさんはもう帰ろうと言い出したが、もう一ヶ所行ってみようと、国上のほうへ足を伸ばした。一袋あった。黄色く変色しかかっていたが、カミさんは“折角だから”と買い込んだ。

少し先に目をやると、植木鉢が並んでいる市場があった。ついでに005_3 覗いてみたら、何とメダカがペットボトルに入って売られていた。種子島もメダカが商品になる時代になったのだ。

「買って、飼ってみよう」カミさんが珍しく駄洒落を飛ばして、4匹入り400円を買った。金魚蜂に似た花瓶に入れて縁側に置いた。メダカは元気に泳ぎ回っている。

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雨乞い……雨恋

029_2 もう久しく雨が降らない。道端の雑草の息も絶え絶え、萎れている。

「雨さえ降らしてくれれば、台風でも大歓迎よ」

カミさんと従姉妹が電話で話していた。

昼食後、カミさんが西京ダムの水量をみに行こうと言い出した。私011 達が騒いだところでどうにかなるものでもないが、自然観察派のカミさんにとっては、放ってはおけないのだ。満水時より2mくらい水位が下がっていた。帰ったら早速従姉妹に報告するはずだ。

私が一休みしている間に橋を渡って先に行っていたカミさん、帰ってくるなり、30センチ位の緋鯉がいたというので大急ぎで行ってみた。後姿をとらえることが出来た。広いダムを独り占めだとばかりに、悠々と泳いでいった。

028  水面に浮いている橋を渡っていたら噴水が上がった。緑の山並みをバックに吹き上がる噴水……涼味満点である。

帰路、たまには鹿小屋に行ってみようかと、車を止めたら、鹿が一頭近寄ってくる。小屋までつかず離れず一緒に行くので、小屋から逃027_2 げ出したのかと思ったが、しばらく徘徊してから、くるりと向きを変え、山のほうへ走り去った。どうやら野生の鹿だったらしい。

ダムの水量を確認し、緋鯉を目撃、噴水も上がり、鹿にまで 出会う……老夫婦にとっては盛りだくさんなアッポーランドデーではあった。

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