ジジのマジック

 マジシャンと言えるほどの大技の持ち主ではなく、子供だましのテーブルマジックが少々できる程度で、幼児から小学2~3年生くらいまでなら、楽しませることはできます。

 先日、病院の待合室で、隣に座っていた母親に連れられた男の子が、退屈してぐずり始めました。やたら声をかけても警戒されるかなとは思いましたが、母親と一緒なら気を許すのではないかと、話しかけてみました。

 「ジジがマジックを見せようか」男の子はキョトンとして私の顔を見上げてから、母親の顔を見ました。

 「よかったわね、見せていただきなさい」

 男の子は安心して私の方に向き直りました。

 「じゃあ見せるね」と私はポケットから500円玉を取り出し、右手の親指と人差し指ではさんでみせます。

 「よく見ていてよ」500円玉を左手で取ります。ゆっくり手を広げます。左手は空です。裏を見せますがありません。元に戻してから左手の裏に右手をいれ、ゆっくりと出すと500円玉が現れます。「すごい」母親の声に男の子も目を見張ります。

 「もう一度やるから、よく見ていてよ」といってから、今度は私の首の後ろから取り出します。そして3度目に男の胸のポケットから出してみせます。

 順番が来た男の子は「有り難うございました」と会釈する母親に手をひかれ、振りむいて手を振りながらニッコリして診察室に向かいました。

 ジジとしてはいいことをした気分でした。

| | コメント (0)

夏だ!百日紅だ!

Img_7786  久々に広がった夏の青空にピンクの百日紅が映える。

 Img_7785 雨こそ降らなくとも、太陽は顔を出さない日が続いていたが、日本列島に梅雨明けが報じられた翌日、種子島にも夏の青空が広がった。

 

 ところが全国的に35度以上の真夏日となって、どこのテレビ局でも熱中症注意報を繰り返している。年寄りともなれば、ちょっと体を動かしただけで汗まみれ。若いころとは違い、体力の消耗も激しい。

 「世の中思うようにはいかないわね」

Img_7784  勝手な人間どもの愚痴をよそに、百日紅が夏の青空に向かって咲き誇る。

 

 「そうね、花たちは私たちを楽しませてくれているのだから、文句ばかり言わずに、感謝の気持ちも忘れないようにしなくっちゃね」

 百日紅を見上げて元気づけられたカミさん、立ち上がって掃除機を手にして力強く言った。

 「邪魔だから、そこどいて」

| | コメント (0)

猫と小鳥とひと騒動

早朝6時、ドスンとデカ猫のイークンが足元に飛び乗ってきた。

何事かと飛び起きた。カミさんもイークンの傍にいて“二人”して天井を見上げている。

「どうした、どうした」

「イークンが小鳥を掴まえてきたのよ。その小鳥は生きていて、部屋の中を飛び回っているの」

 

イークンはいきなりベッドから飛びおりて、今度は真剣な眼差しでエアコンの上を見ている。

次の瞬間、部屋の反対側の方へ飛んでいった。小鳥が飛んでいったのだろうが、電灯はついているが、うす暗くてよく見えない。

イークンはまた戻ってきて、きょろきょろ天井に目を走らせている。

 

カミさんが素早く縁側の障子を開け、ガラス戸も開けた。

突然イークンは縁側に突進した。

私としてはイークンとカミさんの動きを追って、小鳥の動きを知るしかない。

 

「あっ、外へ出た、あー、よかった。小雀だったみたい」

カミさんは飛び出すところを確認したという。

私はベッドの上で、ただ、あれよ、あれよとみているだけだった。

 

「イークン、小鳥さんを掴まえてはダメだっていつも言っているでしょ」

カミさんは叱りつけた。

イークンはちらりとカミさんの顔を見上げて、無言で立ち去った。

| | コメント (0)

自生トマト

Img_7758_20190712112201 庭のミニトマトが赤く色づいている。

といってもこのトマト、家庭菜園風に苗を植えたのではない。カミさんは穴を掘って生ごみを埋めているのだが、そのなかにあったトマトの種が勝手に芽を出し、成長した自生のトマトだ。

 

自由に成長させたいカミサンとしては、脇芽を積むなどの手入れは全くせず、倒れないように支柱を立てただけで、枝は伸び放題、実も成り放題のトマト任せ。育っている場所は庭の一部だが、野生そのものだ。

Img_7756  

この日20個ほどもいできて食べてみたが、トマトらしさの味が薄い。

「生ゴミが肥料になっているのだから、美味しいはずだけどねえ」

カミさんはちょっぴり不満気だが、思いがけぬ収穫にご満悦である。

| | コメント (0)

傘寿

 物忘れが激しくなり、一度に二つの仕事はこなせない。「歳は取りたくないものだ」が口癖に‥‥。

 こんな状況になれば「何が目出たい誕生日」「誕生日 目出度くもあり 目出度くもなし」といった心境にもなる。

 

 カミさんが80歳の誕生日を迎えた。これまでは西瓜を老夫婦でお腹いっぱい食べたりして、簡単に過ごしてきたが、いくら平均寿命が延びたご時世とはいえ、80歳ともなれば「何が目出たい」とも言ってもいられない。そこで80歳にちなんで8000円分の花を籠にアレンジしてもらい、サプライズで贈ることにした。

 

 誕生日当日、生花店から届けてもらい、カミさんに手渡した。

 「エッ、誰から」

 想像もしていなかったカミさん、一瞬戸惑いの表情を見せる。サプライズは成功だ。

 「ご主人さまからです」と聞いて「まさか」と私の顔を見る。

 「そのまさかだよ、80歳だから8000円の花だよ」

 

 テレ隠しからか「もったいないことをして、お金の方がよかったも‥‥」

 そう言いながらも、花をしげしげとみつめてニッコリ。

 「こんな豪華な花籠、生まれて初めて貰ったわ」

 

| | コメント (0)

雨に咲く花

Img_7707_new_20190622161101   今日も雨か……思わずこんなつぶやきが出るほど、今年は雨がよく降る。

 そんなジメジメした気分を晴らしてくれるように、玄関脇の鉢植えの中から、赤く丸い花火が開いたようなハエマンサスが咲いていた。

 「今年は一輪だけど肥料が行きとどいたようで、大きく咲いてくれたのよ」

Img_7708_new_20190622161501  カミさんも満足気だ。

 

 少し先にいくとデフィランサスが、軒下で風に揺れている。例年に比べて花の数が少ない。それでもちらを元気づけるように笑いかけてくれているようだ。

 

 Img_7719_new_20190622161501 ポツンと離れたところでカサブランカが二輪、私もいますよというように咲いている。

 「あれ、あのカサブランカはこれまでに見たことがないね」

 「よく気がついたわね。新しく植えた球根が咲いたのよ」

 

 「まさに”置かれた場所で咲きなさい”だね。どの花も素晴らしいよ」

 「何を哲学者のようなことを言っているの。似合いませんよ」

 

 カミさんはドリップで淹れたコーヒー、私はインスタントコーヒーを手に、雨の庭に咲く花々を眺めながらのひと時。

 

 

 

 

 

| | コメント (0)

主役交代

Img_7662 カサブランカが大きな顔をして咲いている。蕾も控えている。

「やはりカサブランカが豪華だわね」

草取りが一段落したカミさん、腰を伸ばして見詰める。

庭の隅で目の届かない所にある月下美人を、家の中で咲かせようと花瓶にさした。夜8時、開き始めた。品のいい甘い香りが部屋中に漂う。

 

Img_7681_1 クジャクサボテンは姿を消し、ガクアジサイも色あせてきた。

狭い庭ながら、季節の移り変わり…主役の交代を物語っている。

 

Img_7685_3 穴を掘って埋めた生ごみの中から、トマトが芽を出し、実をつけている。

「それこそド根性トマトジャン」

「ド根性とはちょっと違うでしょう」

「それにしても肥料が効いて美味しいかもよ」

「それは言えるかもね」

 

庭いじりはカミさんに任せっぱなしの私は、カミさんの労をねぎらう。

夏のある一日、老夫婦の他愛のないひと時。

 

| | コメント (0)

アジサイの予告

 Img_7623 たった一株ではあるが、丸型の刈り込みがうまく決まったガクアジサイの花が咲いた。昨年まではばらばらだったのだが、今年は派手さはなくてもきれいに顔を揃えている。

 道路沿いの土手には、テッポウユリがまばらながらも、道行く人に顔を向けて咲いている。

 Img_7630 庭に入れば玄関前でクジャクサボテンが一輪存在を主張している。

 イチイにはナゴランがへばりついて咲いている。 

 五月の下旬、日本列島は異例の夏日に見舞われていた。札幌でも30度を超す夏日が続き、さらに連日35度を記録した地方もあるという。

 Img_7634 20年以上も前に札幌に住んでいたことがあったのだが、札幌の夏は一週間程度だったことを思い出して、その異常さを実感している。

 「そういえば、札幌は冬が長かったけど、ここ種子島は夏が長くて、まるで正反対だわね」

 種子島産まれのカミさんは、余程印象的だったのだろう、未だに札幌時代の生活と比較している。

 「さあ、これから永くて暑い夏がやってくるわよ」

 庭の花々に目を戻したカミさんは、今自分がどこに住んでいるのかを確認するように呟いた。

| | コメント (2)

アマリリス赤く

Img_7554  アマリリスの季語は夏。我が家の庭にも、鉢植え、直植えとも深紅のアマリリスが咲いている。今年は暖冬のせいか例年より咲くのが早いように思う。

 あまりの堂々たる咲きっぷりに、生涯学習でかじった俳句でも捻って見ようかという気になった。

Img_7567  先ずはお手本をとネットで検索。

 「三方に呼びかけているアマリリス」あさなが捷

 「アマリリス四方に向くも素っ気なし」石田嘉江

 Img_7584_new 「向き向きに聴き耳立ててアマリリス」中村ふく子

 アマリリスは2輪で咲いていれば互にそっぽを向いているし、4~5輪咲いていれば、それぞれが思い思いの方を向いている。

 同じアマリリスでも、目にしたときの心のあり方で、感じ方がそれぞれ異なることは言うまでもないが、私と同じ思いを持った俳人のいることに嬉しさを感じた。

 おこがましくも、そこで一句。

 「脇見せず振り向かずアマリリス咲く」……お粗末。

 

| | コメント (0)

ニオイパンマツリ

パソコンに向かっていたら、ほのかな甘い香りが漂ってきた。Img_7552

ベランダのガラス戸を開けてみた。部屋からの灯りの中に、ニオイパンマツリが暗闇の中に浮かび上がった。

種子島の西之表市に移り住んだばかりのころ、鉢植えのニオイパンマツリを購入した。鉢に収まりきれなくなって地面に移したのだが、22年間、毎年甘い香りを届けてくれている。Img_7550_1

カミさんに撮った写真を見せた。

「夜のニオイパンマツリも素敵じゃないの」

Img_7551

その翌日、朝から降っていた雨が上って、日が差してきた。

今度は庭に出て、逆方向からパチリ。

義母は何でも丸く刈り込むのが好きだったので、庭師さんに頼んで、二段重ねにして丸く刈り込んで貰ってある。

その義母が亡くなってもう12年になる。

「今年もよく咲いてくれたネ」

亡くなるまで、この家の主を元気に務めた義母の姿が目に浮かぶ。

 

| | コメント (0)

«春が香る